【鹿児島 和菓子】鶴の飛来地で愛される「山元菓子舗」の桜かるかんと職人技



鶴の飛来地として知られる
鹿児島県出水市では、
鶴にちなんだお菓子が多く存在します。

その中でも、鶴にちなんだ商品や
鹿児島名物「かるかん」を

はじめとする和洋菓子を手掛ける
山本菓子店にお話を伺いました。

ここでは、代々受け継がれた伝統と
先代(仁次郎さん)が
築いた信頼が息づき、
地域の風土を感じさせる
お菓子が作られています。




■本記事のポイント

・代々続く鹿児島の和菓子店

・山芋と米粉を使ったこだわり製法

・「桜かるかん」をはじめとする手作り和菓子の魅力

・鶴の飛来地として有名な地域で、
 鶴にまつわるお菓子づくりも実践


・顧客の要望に合わせた甘さ調整や季節感への配慮

 

・若い世代にも和菓子の魅力を伝える取り組み

 

項目 詳細
取材先 山元菓子舗
所在地 鹿児島県出水市高尾野町江内3347−11


先代と築いた
~お菓子への深い愛情~


先代と幸子さんの写真
(左:幸子さん / 右:先代/仁次郎さん)

鹿児島で長く続くこのお菓子店の
を築いたのが、
仁次郎さんと幸子さんです。

>先代のエピソード<

  • 仁次朗さんはお菓子作りへの深い愛情を持ち、
    作りながらも甘い物をつまむほどの お菓子好きでした。

  • 常に値引きやおまけを惜しまず、
    お悔やみの場面などでも
    必要な供え物を自ら用意するなど、
    人のための”商売として 地域に愛されてきました。

  • 仁次朗さんはおおらかな性格な一方、
    幸子さんはきっちりとした性格で、
    経営面からサポートし、
    家庭仕事の両面で 店を支えてきました。



先代は近年、体調を崩してしまい工場から
離れざるを得ませんでしたが、
入院直前まで

ずっと工場に立ち続けたい」

という強い思いを持ち、
ぎりぎりまで仕事を続けたといいます。


先代の工場の写真

その一方で、幸子さんは現在も製造の現場に立ち、
夫である仁次郎さんから
受け継いだ伝統の味を守っています。

二人三脚で確立した、

安くても手間を惜しまない



というお店の姿勢は、
戦後の困難な時代から現在に至るまで、
多くの人に親しまれる老舗和菓子店
としての姿を 保ち続けています。

作り続ける鹿児島の味
~かるかんの歴史~


かるかんの写真

看板商品である「かるかん」は、
鹿児島名物として

観光客のお土産に選ばれるだけでなく、
地元の方の普段のおやつとしても人気です。

戦後の厳しい時代から"おいしさ"への
研究をし続け、工夫を積み重ねてきました。

幸博さんのアバター 幸博さん

先代(父)はとにかくを作っていたので、
一緒に作るうちにお菓子に対する
こだわりが分かってきました。


代々受け継がれる

この家族の歴史と技術こそが、
かるかんの独特のふんわり感 を支えています。

~「桜かるかん」~


桜かるかんの写真

鹿児島のかるかんとは別で人気なのが

桜かるかん」 


>特徴<

  • 山芋と米粉のかるかん生地を
    ベースに、桜風味のあんこを包み込み、
    塩漬けの桜をあしらう

  • 桜と聞くと春限定をイメージしがちだが、 一年を通して販売



桜かるかんの詳細

幸博さんのアバター 幸博さん

葉っぱの部分(塩漬け桜の茎など)
を取り除く手間はかかりますが、
その一手間が丁寧な仕上がりにつながります。


ほんのり香る桜と、
しっとりした生地が好評で、
季節を問わず親しまれています。

素材へのこだわり
~山芋と米粉がもたらす食感~


生地づくりの様子

カルカンまんじゅうの要となるのが、
山芋と米粉(かるかん粉)の絶妙な配合です。

山芋の粘りによって生地は
もちもち感としっとり感が
同居する独特の食感を生み出します。

粘りの少ない原材料を過度に混ぜると
まとまりが悪くなるため、バランスが重要です。

幸博さんのアバター 幸博さん

粘りが弱い素材を混ぜると生地が崩れやすいんです。
しっかりとした山芋を入れるのが大切ですね。


噛むほどに広がる"やさしい甘さ"が、
昔ながらの“おいしさ”を感じさせます。


受け継がれる技術と設備


蒸し器などの製造設備

店の製造場所では、
大型蒸し器やあんこ練り専用
の機械が並びます。

ボイラーだけでも百万円規模
の投資が必要となり、
和菓子屋にとって大きな設備負担
ですが、先代から受け継がれたものを
大切に使用し、

高品質な
商品を生産し
続けています。

あんこを練る工程

あんこは鹿児島の製あん所から生あんを仕入れ、
店内で砂糖の割合を
調整しながら炊き上げます。

気温湿度によって味が変わるため、
職人の経験とがものをいう
部分が大きいといいます。

お客様の喜ぶ顔のために


どら焼きと鶴菓子のイメージ

最近は「甘さ控えめ」を望む
お客さんも増えており、
砂糖を半分にする特注にも
応じられるといいます。

どら焼きには牛皮を挟んだ
バリエーションがあり、
餅好きの地元客に好評です。

また、羊羹には喜界島の砂糖を使い、
まろやかな甘みを出すというこだわりも。

※有名羊羹よりおいしいとリピーターも多いとか

喜界島砂糖を使った羊羹


そして、この地域が毎年1万羽を超える
鶴の渡来地として
知られていることを背景に、

鶴をモチーフにした
和菓子づくりも積極的に行っています。

鶴をモチーフにした和菓子

※鶴をモチーフにしたお菓子などが揃います。

親子で紡ぐ老舗の未来


衝突と和解のイメージ


「まずは早く量を作れ」


という先代の方針と、
見た目を重視する現店主(幸博さん)の方針が
ぶつかったこともありましたが、

長く同じ現場で働くうちに
互いの苦労
理解し合うようになりました。

現店主の仕事風景


現店主の幸博さんは、
当初別の業界に就職していましたが、
が守り続けた味を
絶やしたくないという思いから、

和菓子の道へ。

さらに洋菓子の修行も経て、
幅広いお客様のニーズに応える
店づくりを進めています。

鶴の飛来地との結びつき
~地元と歩む和菓子店~


出水平野の鶴

この地域にある 出水平野 (いずみへいや)は、
世界有数の鶴の越冬地として知られ、

10月中旬から3月頃にかけては
大勢の観光客が訪れます。

国の特別天然記念物に指定された
鶴を保護するため、
地元の人々は手厚い給餌や
農作物の保護対策を行いながら、
鶴との共生に取り組んできました。

幸博さんのアバター 幸博さん

鶴はこの地域の象徴。
和菓子を通じて、鶴のいる風景や地元の自然の
豊かさを感じてもらえたらうれしいですね。

 

おすすめ商品紹介


おすすめ商品(かるかん他)

>こだわり商品<

商品名 詳細
かるかん 先代からの定番
山芋と米粉の生地がふんわりとしていて上品な甘さ。
桜かるかん
桜風味のあんこと塩漬け桜を生地に包み込んだ
人気商品。一年中楽しめる。
鶴のおんがえし ビスキュイ生地の中に ピーナッツクリームが入っており、癖になるあじわい
どら焼き


定番どら焼きに牛皮を挟んだタイプ。
和菓子好きにはたまらない食感が楽しめる。

羊羹 喜界島の砂糖を使用。コクのある甘さを抑えつつも
後味はすっきりした味わい



洋菓子との融合商品
さらに、現店主の幸博さんが習得した
洋菓子の技法を 取り入れた洋菓子なども
ラインナップを広げています。

店舗情報・購入方法


山元菓子舗の店舗外観

項目 詳細
店名 山元菓子舗
所在地     鹿児島県出水市高尾野町江内3347−11

 

まとめ


まとめイメージ

戦後の困難な時代から受け継がれてきた
伝統の味は、
先代と幸子さんの
二人三脚によって培われ、

先代が体調を崩して
工場から離れる直前まで続けた
ひたむきな姿勢が、
今日の店の礎となっています。

幸子さんは今もなお現場に立ち、
和菓子一つひとつを丁寧に作り続けています。

家族経営ならではの温かさと、
現店主幸博さんによる
洋菓子の新要素が融合し、

多種多様な商品ラインナップ
が魅力となっています。

さらに、世界的な鶴の越冬地である
出水平野の特色を活かし、
鶴をモチーフにしたお菓子作りにも

積極的に取り組む姿は、
地域との深い結びつきを感じさせます。

\mochimoji編集部より/

取材を通じて印象的だったのは、
先代が最後まで工場に立ち続ける
お菓子作りへの強い思いと、

幸子さんがその意思を受け継いで
現場に立ち続けていることです。

鶴が舞う冬の風物詩とともに、
店自慢の和菓子を味わってみてください。
この記事を書いた人
いしたにたいし

いしたにたいし

経歴
広告代理店を経て和菓子職人に転身。その後より多くの人に和菓子の魅力を伝えたいと考え、和菓子専門サイトを開設・運営中。(和菓子置き換えダイエットで-40kg成功)